2025/06/01 09:11
知らない世界を知る、ほかの人の心に触れる、もうひとつの人生を体験する……
小説にはいろいろな効果があります。
でも、大人になるとなかなか本を読む時間が取れないもの。
そこで6月前半のおすすめとして、掌編小説や短めの短編小説が詰まった本をご紹介します。
1冊目は
『わたしの出会ったささやかな謎 11 short stories』。
11人の書き手が描く、身近で、小さく、でも深い物語11編。
6ページから13ページの短い物語ですが、1編読み終えると不思議な充実感があります。
実はこの章編集は「最近印象に残った出来事」という雑談からはじまった企画でした。
どれも現実に書き手が体験したことばかり。それを物語にしてみると……。
電車で1、2駅で読める、軽やかで深く、読むと心がほっとする物語です。
2冊目は
『とおい、ちかい、とおい』(羽田繭)
10ページ前後の掌編から、少し長めの作品まで、6編の作品が収録されています。
登場人物はみな、わたしたちのすぐ隣にいるような人々。
特別不幸なわけでもないけれど、世界のあれこれに違和感を覚え、そこに飲み込まれないよう必死に踏ん張って生きている。
短いけれど、解決できない小さな塊が胸のなかに残ります。
わたしたちを取り巻く社会について立ち止まって考えたい方に。
3冊目は
『羽牛の這う丘から』(四葩ナヲコ)
短めの短編が6編収録されています。
日常的なお話からSF、ファンタジーまで内容は色々ですが、登場するのはみな特別ではない等身大の人々です。
読んで驚くのは、人々の心に対する解像度の高さ。
不器用ながら懸命に生きる人々が、「少しだけいいこと」を手にする結末にじーんと来ます。
人の心の機微に触れたい方に。
4冊目は
『1998年からのラプソディ』(江口穣)
10ページ程度から少し長めのものまで6編が収録されています。
美しくも脆い恋愛、戦争の記憶、壊れてしまった家族──
重いテーマを扱いながらも、音楽のように読みやすい文章で、思わず引き込まれます。
内容はロマンチックでドラマチック。
短いけれど、登場人物とともに長い時間を歩んだような気持ちになります。
一度きりの人生の重みをじっくりと噛み締めたい方に。
いかがでしょうか。
どの本も手頃な大きさ、重さで、外出のおともにもピッタリ。
ページを開けば、しばし遠い世界に連れて行ってくれるでしょう。